Blog

ちょっと広い馬房のジュピターの話

 ときがわホースケアガーデン | ジュピター

埼玉の山間にある小さな町、ときがわ。
町外れにある、ときがわホースケアガーデンの馬、ジュピター。
彼の馬房はみんなよりちょっと広い。
小さなお庭付き、いやミニ馬場付き馬房。
知らない人が観たらVIP待遇。
確かにめちゃくちゃ年季が入ったカラダで長老的な雰囲気なのでVIPな感じもする。
実際には彼は馬場に出ることができないから、その分、みんなより馬房が広いのだ。
なぜ馬場に出れないかというと、過去に腰を骨折し、足腰が不自由で、歩くのがやっとで寝転んだら立てないから。
だからず—っと立っていた。
誰が教えたわけではないけど、
休みたいときには壁に寄っかかって休んでいた。
(なので壁には布団が貼り付けてある)
自分で生き抜く方法を考え生き抜いた馬。

 ときがわホースケアガーデン | ジュピター


何年か前にはじめて会った頃、馬房の中でジッとしていて、ピリついたオーラを感じた。
調子が悪かったのか、寝転べないことにストレスを感じていたのだろうか。
でもいつしか表情も穏やかになり、VIP馬房の中を歩き回り、
人が寄ると人参をねだって側まで歩いて来ていた。
彼なりに生き抜く方法を考え、生きるために努力し、生きる希望を見つけたのだろう。
筋肉の曲線と毛艶が美しい馬もいるが、
彼のゴツゴツとした直線で構成された体つき、
まるで鋼のような鈍く光る馬体、
それはは彼の生きてきた馬生が刻まれた彫刻作品のようで美しかった。

 ときがわホースケアガーデン | ジュピター



そんな彼が7月3日に亡くなったらしい。
「いくつまで生きたのか」それすらも小さく感じてしまうくらいのほどの馬。
よく立ち続けた、よく生き抜いた、それに尽きるなと。
馬であれば致命的な怪我ながらも治し、立ち続け、生き抜き、
そしてそれを信じ支え続けたオーナーさん、
ときがわホースケアガーデンのみなさん、
訪れふれあってきたいくつもの方々、
色んな力が合わさって現れた奇跡。
ちいさな町、ときがわのレジェンドの話。
考えてみると、ときがわホースケアガーデンはレジェンドだらけだな。
ときがわレジェンドホースガーデン。

 ときがわホースケアガーデン | ジュピター

ときがわホースケアガーデン

追記
彼の競走馬時代の名前は「ミホシドニー」。
1998年5月23日生まれ。
通算成績15戦3勝。
父 サマーサスピション(サンデーサイレンス)
母 ミホバリモア(ミホシンザン)
あの後藤浩輝騎手や横山典弘騎手、岡部幸雄騎手などを背に
中央競馬で活躍していた馬でした。
謹んでご冥福をお祈りいたします。